Cannes Lions/カンヌライオンズ 2015 Vol-3

世界最大の広告系クリエイティブフェス「カンヌライオンズ」
各部門のグランプリ作品紹介、3/4回目です。

過去の紹介はこちらから↓
Cannes Lions/カンヌライオンズ 2015 Vol-1
Cannes Lions/カンヌライオンズ 2015 Vol-2

10.グラス部門
性差別や偏見の解決にチャレンジしたアイデアを評価。


P&G 「TOUCH THE PICKLE」 インド
インドでは女性の生理を”恥ずべき呪い”と捉える古い慣習が根強く残っている。
生理期間中の女性は台所に入れないなど日常生活でも行動を制限され
家庭にあるピクルスの壺に生理中の女性が触れるとピクルスが腐るという迷信まである。
このような文化が性差別や偏見につながっていると考えたウィスパーインドは
この悪しき慣習を断ち切るべく「TOUCH THE PICKLE」をテーマに掲げた動画を公開。
10代の女の子が元気よく「ピクルスの壺」に触れ
その行為を年配の女性たちが応援する様子が描かれている。
"Girls, let's make the taboos go away and touch the pickle jar.
（女の子たち、タブーなんて気にせずピクルスの壺に触ろう）"」と呼びかけ
多くの若い女性を勇気づけ、290万人もの女性がソーシャルメディアなどを通じて
「私もピクルスを触る」と表明。
マスメディアをも動かし、インド中で女性のタブーについて議論するキッカケとなる。
インドにおけるウィスパーの支持率も21％から91％へ上昇。


11.クリエイティブ・イフェクティブネス部門
前年受賞実績がある作品が審査対象で、
測定可能な影響を与えたクリエイティビティを再評価し表彰。


VOLVO 「LIVE TEST」 スエーデン
ボルボ トラックスに装備されている
高い精度と安定性を誇る振動吸収の性能を
「Street Fighter」や「Universal Soldier」シリーズに出演した
アクション俳優ジャン・クロード・ヴァン・ダム得意技の披露でアピールした作品他


12.サイバー部門
ウェブサイトやマイクロサイト、バナーから、バイラル、モバイル広告
アプリケーション、ARGなど審査対象を広げて来たサイバー部門は
デジタル分野での画期的なアイデアを評価します。


UNDER ARMOUR 「I WILL WHAT I WANT」 アメリカ
「世界でもっとも稼いだモデル」ジゼル・ブンチェン。
彼女がスポーツウェアメーカーUNDER ARMOURタレントに起用のニュースが広まった時
SNS上には賞賛と同時に、悪意や嫉妬の言葉も溢れた。
このCMでは、サンドバッグに向かって一心不乱にトレーニングに励むジゼルの背後の壁に
SNS上に実際に投稿された様々なコメントを投影することで
世評にとらわれず「なりたい私になる」（I WILL WHAT I WANT）
一人の女性の姿を浮き彫りにし
そこにUNDER ARMOURというブランドの姿勢を重ね合わせている。


13.プロダクトデザイン部門


「Lucky Iron Fish Project」 アラブ首長国連邦
国民の半分が鉄分不足に悩むカンボジア。
特に、妊婦や子どもたちの鉄分不足は認知障害、成長障害などを引き起し深刻だった。
これま調理中の煮汁などに鉄の塊を入れることが
予防策として推奨されていたが浸透していなかった。
そこで、カンボジアでは幸運の象徴である魚のデザインにして
Lucky Iron Fishと銘打って販売、鍋に入れて料理することを習慣化させ
9ヶ月間で約50%の人々の鉄分摂取量を改善させた。
リサイクル原料を用い、現地の人たちに製造からマーケティング
販売までを任せてプロジェクト展開。


14.ラジオ部門


Sound Cloud 「The Berlin wall of sound」 ドイツ
ベルリンの壁崩壊から25周年、当時のことを風化させないために
それにまつわる歴史的な音源や被害者のインタビューや
独白で音声ファイルを作成しSoundCloudに投稿。
波形をベルリンの壁に見立て、見張り台を模した部分では銃声が聞こえたり
わざと不快な低音を加えるなどして
いかに当時の抑圧された状況が困難なものなのかを体感させている。
長さは7分32秒もあり、これは音速でベルリンの壁を旅するのにかかる時間と同じ長さ。


15.イノベーション部門


what3words 「3 words to address the world」 イギリス
地球を57兆のスクエアに分割（ひと区画：3m×3m）ＧＰＳ機能を活用し
それぞれに３ワードからなるシンプルな“新住所（ネーミング）”を表示するアプリ。
インドやアフリカ諸国など、世界135カ国（75％）で不明瞭な住所表記が実状で
配達物を受け取れない、救助が遅れる、待ち合わせも難しい、といった様々な不都合が生じている。
この新しい住所システムが普及すれば、世界中どこにいても
（住所のない砂漠や山奥、難民キャンプなどにいても）居場所がクリアになり
この仕組みを活用した新しいビジネスにつなげることもできる。


次回、フィルム・フィルム・クラフト・チタニウム・インテグレーテッド各部門グランプリ
Cannes Lions/カンヌライオンズ 2015 Vol-4に続く